「転ばない・焦らない・疲れない」家づくりで、介護生活にゆとりと笑顔を。
自宅での介護は、家族にとってかけがえのない時間である一方、日々の小さな危険や負担が積み重なるものです。段差でのつまずき、浴室での転倒、トイレでの介助のしづらさ…。
そんな在宅介護の困りごとを改善できるのが「介護保険の住宅改修制度」です。手すりの設置や段差の解消など、安全で自立した暮らしを支える改修に使える公的支援で、費用の7~9割が戻ってきます。
介護保険の住宅改修とは?
介護保険の住宅改修制度は、要支援・要介護認定を受けた人が、自宅を安全で暮らしやすい環境に整えるための仕組みです。
対象工事には、廊下や浴室の手すり設置、段差の解消、滑りにくい床材への変更などが含まれます。負担を減らしながら、ご本人も介護する家族も安心して在宅生活を続けやすくなります。
対象になる人と住宅
- 要支援1・2、要介護1~5の認定を受けている方。
- 原則として、住民票がある現在の自宅。賃貸でも家主の承諾があれば利用可能。
住み慣れた家をそのまま安全にしながら介護を続けられるので、住み替えや施設入所を検討する前に、まず検討したい制度です。
費用と自己負担の目安
- 支給限度額は、生涯で20万円まで。
- 自己負担は所得に応じて1割・2割・3割。
- 例えば20万円の工事なら、1割負担で自己負担は2万円。
また、介護度が3段階以上重くなった場合や引っ越した場合には、再度20万円まで利用できます。
必要なタイミングで分けて利用できるのも大きな利点です。
介護保険の住宅改修費用の限度額リセット
これまで利用した支給限度額(通常20万円)を使い切った後でも、一定の条件を満たすと再度20万円までの支給が受けられる制度です。主なリセットの条件は次の2点です。
要介護度が3段階以上上がった場合(例:要支援1から要介護3以上に上がるなど)。ただし、1度利用した時点から3段階以上の増加でなければ対象にならず、3段階リセットは原則1回までです。
転居により住民票を移した場合。引っ越して新しい住居で改修が必要になれば再度支給対象となります。ただし、戻った場合や別荘など住民票移動不要の場所は対象外です。
注意点として、リセットされる限度額は新たに20万円までで、以前の残額に加算されるわけではありません。また、一度リセット後に介護度が下がり再度3段階上がっても2回目のリセットは基本的に認められません。申請時にはケアマネジャーや自治体の担当者に具体的な介護度の判定状況を踏まえて相談することが重要です。
このリセット制度は、介護度の大幅な悪化や転居などの生活環境変化に対応して、再度住宅改修が必要になった場合に経済的負担を軽減し、在宅介護を長く続けやすくするための支援策です。利用できる条件を正しく理解して活用することで、より安心して自宅での介護生活を支えることができます
支給方法と手続きの流れ
原則は「償還払い」です。一度工事費を支払い、後から7~9割分が払い戻されます。
ただし、一部自治体では「受領委任払い」(保険給付分を直接業者に支払い、自己負担分だけ払う方式)にも対応しています。
制度の詳細は、自治体の窓口やケアマネジャーに相談しましょう。
主な工事内容と介護者にとってのメリット
手すりの設置

廊下、階段、トイレ、浴室、玄関などに手すりをつけることで、移動や立ち座りが安定し、転倒の不安を大幅に減らせます。
介護者の「つかまってもらえる安心感」も増し、移動介助がずっと楽になります。
段差の解消

玄関や部屋の敷居、浴室の出入り口など、小さな段差は意外と危険です。スロープを設置したり床を調整したりすることで、スムーズな動線になります。
車いす利用者にも優しい改修です。
滑りにくい床材への変更

和室を洋室に変えたり、フローリングを滑りにくい素材に張り替えることで、介護中の転倒リスクを軽減。掃除もしやすく、日常管理のストレスも減ります。
開き戸から引き戸への変更

介助中にドアが邪魔になる、開けるとき身体をぶつける――そんな悩みを解消できます。引き戸や折り戸ならスペースを有効活用し、介護動作もスムーズ。
和式トイレから洋式トイレへ

立ち座りが容易になり、ご本人の自立度が上がります。介護者の腰への負担も軽減され、共に安心して使える空間に。
申請から給付までの流れ(6ステップ)
- ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談
自宅での困りごとや、どんな改修が必要かを一緒に考えます。 - 施工業者選定・見積もり取得
安心できる業者を選び、具体的なプランを作成します。 - 市町村へ事前申請
工事見積書や理由書、写真などを添えて申請(承認前の着工は対象外)。 - 市町村の承認
内容を確認し、問題がなければ承認通知が届きます。 - 工事実施・支払い
承認後に工事開始。完了後、まず全額を支払います。 - 支給申請・給付金振込
領収書・工事後写真を提出。7〜9割の保険給付が口座へ振り込まれます。
家族にやさしい「介護保険の住宅改修」
住宅改修は、家を新しくするためではなく、「介護の疲れを減らすための工夫」です。
我が家は数年前にこれでトイレを治しました。とてもありがたかったです。
手すりひとつで転倒不安が消えたり、トイレの改修で家族の介助が楽になるなど、日常のストレスも変わります。
制度を上手に活用して、介護する人もされる人も、少しでも笑顔で毎日を過ごせる家づくりを進めましょう。

