はじめに|自宅介護は一人で背負わなくていい
自宅で家族を介護する──
言葉にするととてもシンプルですが、実際に始めると日々の小さな判断の積み重ねに胸がいっぱいになることがあります。
私自身も、母の介護が始まった頃は「何から手をつければいいの?」「この方法で合ってるの?」と不安でいっぱいでした。けれど、地域の相談窓口やケアマネさんの力を借りることで、少しずつ“ひとりで抱え込まない介護”ができるようになりました。
この記事では、自宅介護を始める上での基本的な流れと、私が実際に経験して感じた「知っておくと救われること」を丁寧にまとめています。これから介護を始める方、今まさに頑張っている方に、そっと寄り添えたら嬉しいです。
自宅介護を始める第一歩|相談先はどこ?
地域包括支援センターが最初の味方になる
自宅介護を始めるときに、最初に相談すべき場所は 地域包括支援センター です。
お住まいの市区町村にも必ずあり、介護・福祉・医療のワンストップ窓口としてとても頼りになります。
例えば〇〇市〇〇区であれば、区役所や地域包括支援センターが窓口になり、誰でも無料で相談できます。
「介護が必要かもしれない」と思ったら、まずここに電話してみるだけで大丈夫です。
一人で悩まなくていいのだと感じられる、最初のホッとする場所になるはずです。
私の場合は救急車で運ばれた病院に、退院後を見据えたプロのサポート入院前面談というのがあり、入院が決まった患者や家族が、入院までの間に身体的・精神的・社会的な準備を整え、安心して入院・治療に向き合えるように
患者と病院をつなげる架け橋として患者を総合的にサポートしてくれました。
地域連携も素晴らしくケアマネージャーさんとの連携などもスムーズ取れました。
本当に感謝しています。
自宅介護の始め方と流れ|まずは要介護認定から
自宅介護は、次のような流れで進むのが一般的です。要介護認定がまだの方は是非相談してみてください。
① 市区町村の窓口に相談
地域包括支援センターや役所の介護保険窓口で、状況を聞き取ってもらいます。
「まだ軽いんだけど…」という相談でも全く問題ありません。
② 要介護認定の申請
介護サービスを利用するためには 要介護認定 が必要です。
申請書は窓口で作成し、その場で提出できます。
③ 認定調査と主治医意見書
後日、認定調査員が自宅に来訪。
普段の生活の様子や心身の状態を丁寧にヒアリングします。
主治医にも医療面の意見を書いてもらうため、必ず病院へも情報が送られます。
④ 要介護度の通知
数週間後、
- 要支援1・2
- 要介護1〜5
のいずれかが通知されます。
この“区分”が、今後利用できるサービスの幅を決めます。
⑤ ケアプランの作成
ここからケアマネジャーが登場。
生活リズムや家族の負担も踏まえて、どのサービスをどれくらい使うか 一緒に考えてくれます。
ケアマネさんは本当に心強い存在です。
私も「これは利用したほうがいい?」「費用はどれくらい?」など、不安なことは何でも相談しています。
ケアプランは、介護の土台となる大切な計画書です。担当のケアマネジャーと一緒に、本人や家族の希望、生活スタイル、心身の状態を丁寧にすり合わせながら作成します。「どのサービスを」「どれくらいの頻度で」使うのが最適なのかを一つひとつ話し合い、無理なく続けられる形に整えていきます。介護者自身の生活リズムや負担感も遠慮せず伝えることがポイント。ケアプランは一度作ったら終わりではなく、状態や状況の変化に合わせて随時見直すことで、より安心して在宅生活を続けることができます。
⑥ サービス利用開始
ケアプランができたら、事業者と契約してサービスの開始となります。
ケアプランが整ったら、いよいよサービスの利用開始です。実際にヘルパーさんや看護師さん、デイサービスのスタッフなど、日々関わる人たちとの相性や連携がとても大切になってきます。最初のうちは不安もありますが、利用を重ねるうちに、お互いのペースや好みが少しずつ分かっていき、安心して任せられる場面が増えていきます。また、実際に使ってみて「頻度を増やしたい」「このサービスは合わないかも」と感じた場合は、遠慮なくケアマネさんに相談しましょう。サービスは“使いながら調整するもの”。柔軟に見直すことで、無理のない在宅介護に近づきます。
ここまでくると、ようやく「介護の仕組み」がつかめてきて、心が少し軽くなる方が多いです。
利用できる主な介護サービス|無理せず頼っていい
訪問型サービス
ヘルパーさんや看護師さんが家に来てくれます。
食事介助、入浴介助、排泄介助、掃除や洗濯など、生活の基本を支えてくれます。
訪問型サービスは、自宅介護を続けるうえで最も身近で頼りになる支援です。ヘルパーさんが来てくれることで、介護者が一人で抱えなくてよい時間が生まれます。身体介護(食事・入浴・排泄の介助など)はもちろん、掃除や洗濯、買い物といった生活援助もお願いでき、在宅生活の負担をぐっと軽くしてくれます。利用を続けるうちに、本人の小さな変化にも気づいてくれるようになり、まるで家族のように寄り添ってくれる存在になることもあります。「訪問してもらうのは申し訳ない」と感じる方も多いですが、サービスは介護者の心身を守るための大切な仕組み。無理せず、必要なときに遠慮なく頼ることが長く続ける秘訣です。
「ここだけ助けてくれたら楽になる」というピンポイント利用も可能です。
通所型サービス(デイサービス)
送迎付きで施設に通い、
- 入浴
- 食事
- リハビリ
- レクリエーション
などを受けられます。
通所型サービス(デイサービス)は、在宅介護の負担を大きく軽減してくれる心強い存在です。施設に通うことで、食事・入浴・リハビリ・レクリエーションなどを受けられ、本人にとっても一日の楽しみや生活リズムづくりにつながります。介護者にとっては、その間に家事を済ませたり、自分の時間を持てる大切な休息の時間になります。スタッフが日々の体調の変化に気づいてくれたり、他の利用者さんとの交流が刺激になったりと、精神的なメリットも大きいサービスです。「まだ早いかな」と迷う方も多いですが、早めに利用して慣れていくことで、在宅介護にゆとりが生まれます。介護者にとっては 休息の時間(レスパイト) にもなります。
宿泊型サービス(ショートステイ)
宿泊型サービス(ショートステイ)は、介護者が安心して休息を取るための強い味方です。数日〜数週間のあいだ施設で過ごせるため、介護者が体調を崩したときや仕事の繁忙期、冠婚葬祭などにも柔軟に利用できます。利用中は食事や入浴、健康管理、レクリエーションなどの支援を受けられ、本人にとっても生活の刺激や環境の変化につながる良い機会となります。「預けるのはかわいそう」と感じる方もいますが、介護者が元気でいることこそ在宅介護の継続には不可欠。お互いにとって必要な休息の時間として、前向きに活用していくことが大切です。
数日〜数週間の宿泊ができ、介護者の休息や仕事の都合などにも役立ちます。
福祉用具のレンタル・購入
ベッド、車椅子、歩行器、手すりなど。
私もシャワー用車椅子を購入したとき、ケアマネさんに相談して本当に助かりました。
福祉用具のレンタル・購入は、自宅介護の負担を大幅に減らしてくれる重要なサービスです。介護用ベッド、手すり、車いす、歩行器などは、身体の状態に合わせて安全性や動作のしやすさを高めてくれます。レンタルの場合は1割負担で利用できるものが多く、状態の変化に合わせて交換できるのが大きなメリットです。購入が必要な用具についても、介護保険で一部補助が受けられるため、負担が軽減されます。実際に使ってみて「もっと早く導入すればよかった」と感じる方が多いほど、自宅介護の質を左右する要素。ケアマネさんと相談しながら、必要なものを無理なく揃えていきましょう。
住宅改修
自宅での介護を続けていくと、家の中の「ちょっとした不便」が、ある日突然大きな負担に変わることがあります。段差につまずきそうになったり、浴室の出入りが怖く感じたり…。そんなときに力になってくれるのが、介護保険の住宅改修です。手すりの設置や段差の解消など、必要な部分だけを整えることができ、上限20万円のうち1〜3割の負担で利用できます。
そして知っておきたいのが“再支給(リセット)制度”。要介護度が大きく上がったときや転居したときなど、生活環境が大きく変わった場合には、この20万円枠がもう一度使えるようになる仕組みです。介護は月日とともに必要なサポートが変わっていきます。だからこそ、「前に工事したからもう無理…」と諦めないでs時らべてみましょう。
▼再支給される主なケース
① 要介護度が3段階以上上がったとき
- 要介護1 → 要介護4
- 要支援1 → 要介護3
など、生活の困難度が大きく変わった場合に認められます。
この場合は、
前に使った住宅改修枠をリセットし、再度20万円が利用可能になります。
② 介護保険の認定区分が「非該当 → 要支援/要介護」になった場合
一度「非該当(自立)」になり、
再度調査を受けて 要支援・要介護に認定された場合もリセットされます。
③ 転居が理由で環境が変わった場合
引っ越しに伴い、
新しい住まいで改修が必要になったときも再支給の対象です。
◆知っておくと安心なポイント
- いったん20万円を使い切っても、状態悪化や転居で再び利用できる可能性がある
- 「何度でもリセットされる」制度ではなく、条件を満たす必要がある
- 再支給の判断はケアマネージャーと市区町村の確認が必須
◆この制度が嬉しい理由
要介護度が変わると、
必要な環境も大きく変わります。
- ベッド移乗が難しくなる
- 段差の昇降が危険になる
- トイレ動作が不安定になる
- 入浴に手すりが足りなくなる
など、暮らしの「できること」「危険なこと」が変動するため、
その都度住まいを整え直せるこの制度はとても心強い仕組みです。今の暮らしに合わせて、家も少しずつアップデートしていいんです。あなたとご家族が安心して過ごせる環境づくりを、どうか無理なく続けてくださいね。
自宅介護にかかるお金|知っておくと心が軽くなる
自宅介護にかかるお金は、思っている以上にゆっくり、でも確実に積み重なっていきます。訪問サービスの1割負担、デイサービスの利用料、紙おむつ代、福祉用具のレンタル費など、月に数万円かかることも珍しくありません。「こんなに使って大丈夫かな」と不安になることもあると思います。でも、介護保険には住宅改修や福祉用具購入の補助、要介護度が上がったときの再支給制度など、家計を助けてくれる仕組みが多くあります。費用の目安と制度を知っておくだけで「必要なところに必要な分を使えばいい」と気持ちが少し軽くなります。無理のない範囲で、安心できる介護を続けていきましょう。自宅介護で大切なこと|介護者が倒れない仕組みをつくる
費用の内訳と平均額
自宅介護にかかる費用は主に「一時的な費用」と「月々の費用」に分けられます。
1. 一時的な費用(初期費用)
介護を始めるにあたって一度だけかかる費用です。
- 平均額: 約47万円~74万円
- 主な用途:
- 介護用ベッドや車いすなどの福祉用具の購入・レンタル
- 自宅のバリアフリー改修(手すりの設置、段差解消など)
2. 月々の費用
毎月継続的に発生する費用です。
- 平均額: 約5万円~9万円
- 主な用途:
- 訪問介護や通所介護(デイサービス)などの介護保険サービス自己負担分
- おむつ代などの日常生活費
- 食費や水道光熱費(これらは生活費として別途必要)
費用は要介護度によって変動し、月々の費用は、要介護度が上がるほど高くなる傾向があります。
| 要介護度 | 月額平均費用(目安) |
|---|---|
| 要支援1 | 約5.8万円 |
| 要介護1 | 約5.4万円 |
| 要介護2 | 約7.5万円 |
| 要介護3 | 約9.6万円 |
費用を抑えるための制度
公的介護保険制度を利用することで、費用の自己負担割合は原則1割(所得に応じて2~3割)に抑えられます。また、月々の自己負担額が一定の上限を超えた場合に払い戻される、「高額介護サービス費制度」などの軽減制度も利用できます。
詳細な情報は、お住まいの自治体の窓口や、公益財団法人 生命保険文化センターなどのウェブサイトで確認できます。
“頑張りすぎない” 仕組みづくり
介護は、短距離走ではなくマラソンのようなもの。
どこかで休んだり、誰かに頼ったりしないと続きません。
自宅介護は「気づいたら自分だけが頑張っていた」という状況になりがちです。だからこそ、最初から “頑張りすぎない仕組み” をつくっておくことが大切です。たとえば、できる家事は外部サービスに頼ったり、買い物はネットスーパーに切り替えたりするだけでも負担はぐっと軽くなります。また、週に1回だけでもデイサービスを利用すると、介護のペースが整いやすくなります。「全部自分でしなきゃ」という思い込みを手放し、仕組みで自分を助けることが、長く続けるためのカギになります。
私も、デイサービスの送り出しの日にバタバタして疲れてしまうことがあります。
そんな日は Amazon フレッシュを使って買い物をサボる(笑)
これだけでも体力の消耗が全然違います。
共倒れを防ぐために
在宅介護でもっとも避けたいのは、介護者と家族が共倒れしてしまうことです。介護はゴールが見えにくく、気がつくと心も体も限界に近づいている──そんなケースを多く見てきました。だからこそ「休むこと」を計画に組み込むことが重要です。“少しきついな…” と感じたら、ショートステイを数日利用したり、周囲の家族に数時間だけでも代わってもらったり、負担を分散する工夫が必要です。
一番危険なのが、介護者が我慢し続けて倒れてしまうこと。「休むのは悪いこと」と思わず、むしろ“介護を続けるための戦略”と考えて、意識的に力を抜く時間をつくりましょう。
- ショートステイ
- デイサービスの追加利用
- 訪問サービスの導入
などをためらわず使ってくださいね。
介護者の身体ケアも仕事のうち
介護は力仕事が多く、知らず知らずのうちに腰や肩に負担がかかっています。私自身も、ある日突然ぎっくり腰になって初めて「私の身体が動かなくなったら、介護どころじゃない」と痛感しました。
ストレッチを習慣にしたり、睡眠の質を上げる工夫をしたり、ときにはマッサージを取り入れるなど、介護者自身のケアは“贅沢”ではなく“必要経費”です。自分の身体を整えることは、家族の生活を守ることにもつながります。どうか後回しにしないでくださいね。
私は最近、リライブシャツで眠るようにしていますが、
「朝の腰の痛みが違う!」という日があって驚いています。
介護は体力勝負。
介護者自身が元気でいることが、結局は家族のためになります。
介護保険外サービス・自費サービス
ちょっと助けてほしい時の“もうひとつの選択肢”
在宅介護を続けていると、「ここだけ誰かにお願いできたら…」という場面が必ず出てきます。そんな時に便利なのが、介護保険外(自費)のサービスです。たとえば、掃除や買い物、通院の付き添い、大掃除や庭の手入れ、夜間の見守りなど、保険ではカバーしきれない部分を柔軟にお願いできます。費用は事業者によって異なりますが、必要なときだけスポットで頼めるのが魅力。介護者が無理なく生活を回すための“補助エンジン”のような存在です。罪悪感を持つ必要はありません。誰かの力を借りることで、介護者にも心の余白が生まれ、結果として在宅介護が安定して続けやすくなります。
家族が揃えておくと便利なもの(チェックリスト風)
日々の介護を少しでもラクにするために
在宅介護では、ちょっとした工夫や物の準備が毎日の負担をぐっと軽くしてくれます。以下は、私自身の経験から「先に揃えておくと本当に助かる」と感じたものです。
- 滑り止めマット:転倒予防に効果大。
- 手すり類:動線上にあると安心感が増します。
- 大判タオル・使い捨て手袋:清拭やオムツ交換などで何枚あっても困りません。
- 口腔ケア用品:スポンジブラシや保湿ジェルは高齢の口腔トラブル予防に役立ちます。
- バリアフリーの室内シューズ:足元が安定するだけで、歩行がぐっとラクになります。
- お薬カレンダー:飲み間違え防止に必須。家族みんなで管理しやすくなります。
- 緊急連絡先の一覧表:主治医・ケアマネ・家族の連絡番号を一枚にまとめて玄関に貼っておくと安心です。
こうした小さな準備は、介護を“頑張りすぎない”ための大切な味方。家族の負担を減らし、本人も安心して過ごせるお家づくりにつながります。
おわりに|地域の力を借りながら、自宅介護を続けるという選択
自宅介護は、決して一人で成し遂げるものではありません。
行政の仕組み、地域のサービス、ケアマネさん、家族……
いろいろな力を借りながら、“あなたらしい介護” を作っていくものです。
自宅介護は「毎日が小さな選択の積み重ね」です。正しい答えがあるわけではなく、日によって心の余裕も体の調子も変わります。だからこそ、できない日は抱え込まず、できた日は自分を褒めてあげるくらいの気持ちがちょうどいいのだと思います。介護は一人で背負うものではなく、サービスや周囲の人を巻き込みながら続けていくもの。あなたが少しでも笑顔でいられる時間が増えることが、結果的にご家族の安心にもつながります。どうか今日も無理をしすぎず、ゆっくり深呼吸しながら進んでいきましょう。
もし今、
「どこから始めればいいかわからない」
と思っているなら、まずは地域包括支援センターに電話してみてください。
その一歩で、きっと景色が変わります。
そして、あなたの毎日が少しずつ軽く、優しくなりますように。
心からそう願っています。
よくある質問(FAQ)
友人との介護話の中でよく質問されることをまとめました。
Q1. 自宅介護の月額費用はどれくらいかかりますか?
A. 利用する介護サービスによって大きく異なりますが、訪問介護やデイサービスなどの組み合わせで 月3〜6万円程度が一般的です。おむつ代や医療費を含めるともう少し増える場合もあります。
Q2. 介護保険を使うとどれくらい安くなりますか?
A. 原則として利用者負担は 1〜3割です(所得に応じて異なります)。もし全額負担となると非常に高額になるため、介護保険の活用が大きな助けになります。
Q3. おむつ代は月にどれくらいかかりますか?
A. 種類や使用枚数によりますが、平均して 月7,000〜10,000円ほどかかります。定期購入を利用すると、費用と手間をある程度抑えられます。
Q4. 施設に入る場合はいくら必要ですか?
A. 特別養護老人ホームは 月13万円前後、民間の有料老人ホームは 月20〜30万円以上が一般的です。年金だけでは不足し、家族が負担を補うケースも少なくないようです。
Q5. 自宅介護の費用を抑えるコツはありますか?
A. サービスの使い方を調整したり、福祉用具をレンタルしたり、必要に応じてショートステイを活用するなど、“適切に頼る”ことがポイントです。無理せずケアマネさんに相談しながら進めるのがおすすめです。
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