母と私 ― 味でつながる親子の時間
最近、母が何を食べても「美味しい、美味しい」と喜んでくれます。
その言葉を聞くたびに、胸の奥がふっと温かくなります。
親子って不思議ですね。幼い頃から同じものを食べているからでしょうか、私が作る味は自然と母の味にそっくりになってきます。
特別に教わったわけではないのに、台所に立っていると、いつの間にか母と同じ味になっていることに気づきます。
幼い頃から母の隣で見て覚えた手の動き、調味料の加減、火加減…どれも無意識のうちに身についているのでしょう。母は料理が大好きで、外食して美味しいと思ったものも、家に帰って再現するほど熱心でした。
その姿を見ていた私は、自然と同じように家庭料理を楽しむようになったのだと思います。
料理の思い出 ― 母の味を受け継ぐ
最近、幼い頃母が作ってくれた料理が無性に食べたくなります。シンプルな家のミートソースやプリン、蒸しパン、おこわなど、どれも素朴な料理です。食べてみると、思った以上にシンプルな作り方でも母の創意工夫が感じられ、当時の記憶とともに懐かしい味が蘇ります。今ではその味が私の味になり、家族にも喜ばれています。
特にプリンは思い出深いです。幼い頃、母が作ったプリンは初めは寒天プリン、次に蒸し器で蒸したプリン、そしてオーブンで焼くプリンへと変化しました。シンプルながらも卵と牛乳、カラメルだけで作るプリンは、買ったプリンとはひと味もふた味も違います。特に寒天プリンは、私がまだ4~6歳の頃、オーブンがなかった時代に母が手間をかけて作ってくれたもの。魔法のような市販プリンが出回っても、やはり母の手作りプリンの味には敵いませんでした。
現代の工夫 ― 手軽に作れる母の味
今では棒寒天を水に漬けて煮溶かす手間もなく、寒天パウダーで手軽に作れるようになりました。昔と比べて便利になった分、母の味を自宅で簡単に再現できるのはありがたいことです。また、息子が料理人になったため家でパスタを作ることはほとんどありませんが、家庭の味のミートソースだけは別物。具沢山でひき肉、玉ねぎ、人参をたっぷり入れるミートソースは、どこでも食べられる味ではなく、母から受け継いだ家庭の味として今も楽しんでいます。
ちらし寿司の寿司加減や竜田揚げのつけダレの味など、すべてのベースは母から学んだ味です。母が「美味しい」と喜んでくれる味は、母自身が好きな味。そして今は、私にしか作れない母の味として家族に受け継がれています。
母と過ごす時間が増えた在宅介護の中で、 こうした「何気ない日常」が、あとから振り返ると かけがえのない記録になっていると感じるようになりました。
在宅介護を始めた最初の一年に、 私自身が感じた戸惑いや気づきをまとめた記事があります。
親子の味を次世代へ
料理を通して感じるのは、味が親子の絆をつなぐ大切なものだということです。幼い頃に覚えた家庭の味は、そのまま記憶や感情と結びつき、人生の中で何度も思い出されます。母の味を覚え、同じように作れるようになった今、家族とともに笑顔で食卓を囲む時間が何よりの幸せです。
そして、母が元気なうちにレシピを聞いておくことは大切です。年齢を重ねると忘れてしまうこともありますが、手元に残れば、家庭の味として未来へ受け継ぐことができます。母の味を守りながら、少しずつ自分の味としてアレンジし、家族の喜びにつなげることが、在宅介護や日常生活の中での大きな楽しみです。

