在宅介護の毎日は、心の揺れとのつきあいでもあります
介護をしていると、思い通りに進まなかったり、小さな行き違いが積み重なったりして、ついイライラしてしまう瞬間があります。
「こんなことで怒ってしまった…」
「優しくしたいのに、余裕がなくてつらい」
そんな気持ちになるたびに、私も自分を責めてしまった時期がありました。
でも介護は、「人としての感情を押し殺すこと」ではありません。
イライラは未熟さではなく、がんばっているからこそ生まれるサインだと、今は思っています。
ここでは、私自身が実際に行っている
“その場で気持ちを立て直すための小さなリセット法” をまとめました。無理に前向きにならなくて大丈夫。
「いったん立ち止まる」ための、習慣として使っていただけたら嬉しいです。
1|短時間で気持ちをゆるめる「小さな気分転換」
イライラが高まっているときは、心も体も強く緊張しています。
まずは、その緊張を少しだけゆるめてあげることから始めます。
- ・5分だけ外の空気を吸う
- ・温かい飲み物をゆっくり飲む
- ・好きな曲を1曲だけ聴く
- ・深呼吸を3回「ゆっくり長く」
大げさなことをする必要はありません。
“今できる範囲の小さな行動” で十分です。
私はよく、窓を開けて空を見ながら
「〇〇(自分の名前)らしくないよ。今は気分転換が必要だから音楽聴いてコーヒー飲もう」
と心の中でつぶやきます。
それだけでも、少しだけ気持ちが落ち着き、「次の一歩」を踏み出せる自分に戻っていける気がします。
2|声に出して「今の気持ち」をそのまま認める
感情が強く揺れているときは、頭の中がいっぱいになり、気持ちが整理できなくなってしまいます。そんなとき私は、あえて言葉に出して感情を認めるようにしています。
「私は今、疲れているね」
「イライラしてる」
「しんどいって感じている」
不思議なことに、声に出したその瞬間から感情が少しずつ輪郭を持ちはじめ、落ち着いていきます。
ノートに短く書き出すのもおすすめです。
- 怒った理由
- つらかった場面
- 本当はどうしたかったか
感情を外に出すことは、弱さではなく自分を守るための大切なケアだと思っています。
3|「なぜイライラしたのか」を振り返り、次へつなげる
落ち着いてきたら、少しだけ振り返ります。
- 体が疲れていた?
- 予定が詰まりすぎていた?
- 助けを求められなかった?
- 介護環境に無理があった?
- 他にストレスの溜まることがあった?
イライラの原因は「あなたの性格」ではなく、環境・疲労・負担の重なりであることがほとんどです。
そこで私は、できる範囲で小さな調整を積み重ねてきました。
- 介助手順を一部ラクに変更
- 介護用品を見直す
- サービスを少し頼る
- 自分の休息を優先する時間をつくる
- 心配な問題を解決する
すると、同じ場面に出会っても以前より落ち着いて対応できる自分に出会えることがあります。
まとめ|イライラは「ダメな感情」ではありません
介護の中で生まれるイライラは、誰かを大切に想い、日々向き合っている証でもあります。
どうか、自分を責めすぎないでください。
リセット法を知っているだけで心の疲れが少し軽くなり、気持ちの切り替えがしやすくなります。
- 小さな気分転換
- 感情を言葉にする
- 次につながる振り返り
今のあなたにできるペースで、少しずつで大丈夫です。
今日も本当にお疲れさまです。
あなたの頑張りは、決して一人のものではありません。


よくある質問(FAQ)
Q1. 介護でイライラしてしまう私はダメな人間でしょうか?
A. いいえ、決してそんなことはありません。
イライラは「頑張りすぎている」「疲れが溜まっている」という心と体からのサインです。
完璧な介護者でいようとするほど、自分を追い込んでしまう場合が多いです。
感情は抑え込むのではなく、いったん受け止め、休息やリセット時間を取ることで私はだいぶ軽減できています。
Q2. 介護中に強く怒りそうになったとき、どう対処すればいいですか?
A. その場から一度だけ離れ、短いクールダウン時間をとることをおすすめします。
深呼吸・水を飲む・数分間外気に触れるだけでも気持ちが落ち着きやすくなります。
「いま私は疲れている」と言葉にして認識することも、感情の暴発を防ぐ大きな助けになります。
Q3. イライラを家族や本人にぶつけてしまいました…。どうすればいいですか?
A. まずは自分を強く責めすぎないでください。誰しも完璧ではないのです。
そういう時もあります。
介護は気力と体力を大きく消耗するため、誰にでも感情が揺れる瞬間があります。
落ち着いてから「さっきは余裕がなかった」と短く伝え、今後の負担を軽くする工夫を家族で見直していきましょう。
Q4. イライラしやすい日が続くのは、介護が向いていないからですか?
A. いいえ、多くの場合は 睡眠不足・疲労・負担過多・相談不足 が原因だと思います。
「ひとりで抱え込んでいないか」「休息を取れているか」を振り返ることがとても大切です。
必要に応じて、サービス利用や家族分担の見直しも検討しましょう。
Q5. それでも気持ちがつらいとき、どこに相談すればいいですか?
A. 地域包括支援センター・ケアマネジャー・地域にある介護者の家族会などは、気持ちの相談も受け付けています。
ひとりで抱え込まず、「今つらいです」と言葉にすることが第一歩です。
同じ経験を持つ人とつながることで、心が軽くなる方も多くいます。
Q6. 介護のストレスで「何もやる気が出ない・涙が出る」ことがあります。これは介護うつでしょうか?
A. 介護が長く続く中で、強い疲労や無気力・気分の落ち込みが続く場合、「介護うつ」の状態になっている可能性があります。
自分を責める必要はありません。
心と体が限界に近づいているサインです。
【こんな状態が続く場合は要注意】
✔ 食欲・睡眠の乱れ
✔ 気力が湧かない
✔ 楽しかったことが楽しめない
こうした状態が 2週間以上続く場合は、早めに相談 をおすすめします。
まずは 地域包括支援センター・かかりつけ医・心療内科 に相談してみてください。
ひとりで抱え込まないことが何より大切です。
Q7. 眠れない日が続き、介護中にイライラしやすくなります。どうすればいいですか?
A. 睡眠不足は感情の揺れ・判断ミス・体調不良につながりやすく、イライラが強くなる大きな原因にもなります。
まずは、次の「睡眠を守る習慣」から整えてみてください。
- 就寝時間をできるだけ一定にする
- 寝る前のスマホ・情報刺激を減らす
- 20分以内の短い昼寝で体力を回復
- 温かい飲み物や入浴でリラックス
「今日は休む日」と決め、家事や介護を少し手放す日を作ること も大切です。私も一日外出する「リセット日」を作るようにしています。可能であれば、あなたも 信頼できる人に一時的に役割をお願いする日 を作ってみてください。
そうすると日常と違う1日過ごすので夜よく眠れます。
眠れない状態が続く場合は、医療機関への相談を検討したほうがいいです。
Q8. 介護うつや睡眠トラブルを、家族や周囲に伝えてもいいのでしょうか?
A. もちろんです。
伝えて大丈夫です。
むしろ「休みたい・今は負担が大きい」と言葉にすることは、弱さではなく 介護を続けるための大切な力 です。
- 家族に役割分担を相談する
- ケアマネに「心身がつらい」と伝える
- ショートステイ・訪問サービスの利用を検討する
“頑張り続けること”より“支援や協力を仰ぎながら続けること” が、介護を守る近道です。

