思いがけず届いた、初夏の贈り物
ある日、玄関に見慣れない箱が届きました。
差出人を見て、思わず「ああ…」と声が漏れます。
若い頃から長い時間を一緒に過ごしてきた、古い友人からでした。
箱を開けると、中には立派な枇杷がぎっしり。
その瞬間、部屋にふわっと初夏の気配が広がった気がしました。
ここ数年、季節の移ろいを「行事」や「予定」で感じることが少なくなっていた私にとって、この枇杷は、時間をそっと連れ戻してくれる贈り物でした。
母と味わう「懐かしい甘さ」の時間
母にも見せると、「あら、枇杷なんて久しぶりね」と、ぱっと表情が明るくなりました。
皮をむきながら、「昔は庭に枇杷の木があったのよ」「子どもの頃は、手を伸ばして取ったものよ」と、ぽつりぽつりと思い出話が始まります。
ひと口食べると、「優しい甘さね」と、ゆっくり噛みしめる母。派手さはないけれど、どこか懐かしくて、心に残る味。
その表情を見ているだけで、こちらの気持ちまで穏やかになっていくのを感じました。
在宅介護をしていると、どうしても「やること」「管理すること」に意識が向きがちです。
けれど、こうして季節の果物を一緒に味わう時間は、介護でも看護でもなく、ただの「親子の時間」なのだと、あらためて思いました。
介護の日々に、ふと差し込む人のぬくもり
友人から添えられていた短いメッセージには、「お母さま、お元気ですか」「無理しすぎないでね」とだけ書かれていました。
多くを語らなくても伝わる気遣い。
在宅介護をしていると、外とのつながりが細くなっていく感覚を覚えることがあります。
だからこそ、こうした何気ない一言や贈り物が、心に深く染みるのかもしれません。
「ちゃんと見てくれている人がいる」その感覚は、介護を続けるうえで、思っている以上に大きな支えになります。
年を重ねても続くご縁のありがたさ
若い頃は、毎日のように会っていた友人とも、今では年に数回、連絡を取り合う程度。
それでも、こうして節目節目で思い出してくれる関係が続いていることに、しみじみとありがたさを感じます。
人とのご縁は、頻度ではなく「積み重ね」なのだと、今になってわかる気がします。
介護をしていると、時間の流れが少しゆっくりになる分、こうしたご縁の重みを、より強く感じるようになりました。
在宅介護の中で気づいたこと
在宅介護は、決して特別な出来事の連続ではありません。
むしろ、こうした小さな出来事。
季節の果物を味わうこと、誰かの気持ちを受け取ること。
その積み重ねが、日々を支えてくれているのだと思います。
母と枇杷を食べながら、「今日も悪くない一日だったな」
そう思えたことが、何よりの収穫でした。
介護の日々は続いていきます。
でも、こうした一瞬一瞬を大切にしながら、無理なく、静かに歩いていけたら。
そんなことを、初夏の甘さとともに感じた一日でした。

