腎臓病と診断されてから、多くの方が最初に悩むのが
「食事をどうすればいいのか」という問題ではないでしょうか。
何を食べてはいけないのか。
どこまで制限が必要なのか。
家族の食事と分けるべきなのか。
在宅介護の現場では、毎日の食事づくりが、そのまま不安につながることも少なくありません。
腎臓病の食事療法は、「我慢ばかり」ではなく、腎臓に負担をかけない選び方と、続けられる工夫を知ることが大切です。
ここでは、腎臓病の方が特に注意したい「食べてはいけない、または控えたい食品」と、無理なく続けるためのポイントを、分かりやすく整理します。
腎臓病で食事制限が必要になる理由
腎臓は、体の中の余分な水分や老廃物、塩分やカリウムなどを尿として排出する重要な臓器です。
しかし、腎臓の働きが低下すると、
- 塩分や水分が体にたまりやすくなる
- カリウムが排出されず、血中濃度が上がる
- たんぱく質の代謝産物が腎臓に負担をかける
といった状態が起こりやすくなります。
そのため腎臓病では、塩分・カリウム・たんぱく質を中心に、食事内容の見直しが必要になります。
腎臓病で特に注意すべき3つの栄養素:塩分・カリウム・たんぱく質
塩分・リンを多く含む加工食品(特に注意)
加工食品は、味が濃く保存性が高い分、塩分やリンを多く含んでいます。
少量でも腎臓に負担をかけやすいため、日常的な摂取は控えたい食品です。
- 加工肉・加工魚製品 ハム、ソーセージ、ベーコン ちくわ、かまぼこなどの魚の練り製品
- 漬物・佃煮・梅干し 少量でも塩分が非常に高く、習慣化しやすい点に注意が必要です。
- インスタント・レトルト食品 カップ麺、缶詰、即席スープ コンビニのホットスナック類
「忙しいから」「簡単だから」と頼りがちな食品ほど、塩分量が多くなりがちです。
カリウムを多く含む野菜・果物(生のままは控える)
カリウムは体に必要なミネラルですが、腎臓病では排出がうまくいかず、血中濃度が上がりやすくなります。
- 生野菜・いも類 ほうれん草、トマト、かぼちゃ、枝豆 さつまいも、じゃがいも、生野菜サラダ
- 果物類 バナナ、メロン、キウイ、オレンジ ドライフルーツ
- 飲み物・汁物 野菜ジュース・果物ジュース(100%) 野菜スープ(カリウムが溶け出しやすい)
特に「体に良さそう」というイメージの食品ほど、量や食べ方に注意が必要です。
高たんぱく食品(制限の有無は病状による)
たんぱく質は、体をつくる大切な栄養素ですが、分解時に腎臓へ負担がかかります。
- 肉・魚・卵
- 大豆製品(豆腐、納豆など)
- 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)
制限の程度は腎臓病のステージによって異なるため、
完全に禁止するのではなく、量を調整することが基本になります。
その他、気をつけたい食品
- ナッツ類・種実類
- 甘い飲料・お菓子類(果糖のとり過ぎ)
甘い飲み物は、水分と糖分を同時に摂りすぎてしまい、腎臓への負担につながることがあります。
在宅で無理なく続ける調理の工夫:カリウム除去と減塩のコツ
カリウムを減らす調理の工夫
野菜は調理方法を工夫するだけで、カリウムを減らすことができます。
- 細かく切る
- 水にさらす
- ゆでこぼす
これらの方法で、カリウムを約20〜50%減らすことが可能です。
だしを活用して減塩でもおいしく
減塩=味気ない、と思われがちですが、
- だしのうま味
- 柑橘類の酸味
- 薬味(生姜・にんにくなど)
を活用することで、塩分を控えても満足感のある食事になります。
麺類の汁は残す
ラーメンやカップ麺のスープには、多くの塩分が含まれています。
麺類を食べる場合は、汁を飲まないことを意識しましょう。
無理をしすぎないことも大切
腎臓病の食事療法は、完璧を目指すほど続かなくなります。
在宅介護では、
「今日はここまでできた」
「少し意識できただけでも十分」
そんな積み重ねが、長く続ける力になります。
食事だけでなく、生活全体をどう整えるかも在宅介護では重要です。
▶︎ 介護が回る生活をつくるために見直した日常生活動作の実体験
在宅介護で向き合う「食」の選択|制限か、楽しみか
食事制限と「生きる時間」をどう考えるか
ここまで、腎臓病の食事で注意したいポイントを整理してきました。
一方で、高齢者の在宅介護を続ける中で、もう一つ大切だと感じている視点があります。
それは、もう高齢で、自分で歩くこともできず、動けない状況のとき、「これからの時間を、どう生きたいのか」という問いです。
私の母は93歳です。
腎臓の状態は、すでに透析が必要な段階にありました。
医師からは、
- 入院して透析をするか
- 自宅に戻り、透析を行わずに過ごすか
その選択を提示されました。
余命は、早ければ2-3ヶ月、1半年はもたないだろうと。
母が選んだのは、入院でも延命でもなく、自宅で、これまでと同じ暮らしの延長を生きることでした。
私自身も、自分のこととして考えたとき、同じ選択をするだろうと思いました。
正直に言えば、怖さがなかったわけではありません。
「これで本当に良かったのだろうか」
「もっとできることがあったのではないか」
何度も考えました。
それでも今は、この選択に悔いはありません。
良かったと思っています。
母の選択を尊重し、主治医と相談しながら、できる範囲で食事を整える日々を続けています。
もしこれが自分だったら、と考えたとき、私ははっきりと思いました。
食べたいときに、好きなものを家族と食べたい。
「体に悪いから」という理由だけで、最後の楽しみまで奪われる時間は、選びたくない。
今、母は好きなバナナも、ナッツも、ドライフルーツも、カステラも、お饅頭も、
量を調整しながら、今も口にしています。
楽しく話をしながらそれを食べるときの表情を見るたびに、私は思います。
この時間は、ただの栄養管理ではなく、生きている実感そのものなのだと。
「正しい食事」と「その人らしさ」は対立しない
腎臓病の食事療法は、とても大切です。
守るべき基本があることも、間違いありません。
けれど、年齢や体力、人生の最終段階に近づいたとき、「すべてを制限すること」が、本当にその人の幸せにつながるかどうかは、一人ひとり違うのではないでしょうか。
長く生きることより、自分らしく生きることを選ぶ人もいます。
在宅介護では、その選択と向き合う場面が、必ず訪れます。
制限を守ることも大切。
けれど、笑顔で食べる時間を守ることも、同じくらい大切だと、私は感じています。
※食事内容や制限については、必ず主治医や管理栄養士と相談しながら進めてください。
在宅介護では、正解のない選択に迷うことも少なくありません。
さまざまな気づきを下記にまとめています。

FAQ(よくある質問)
Q1. 腎臓病では、本当に「食べてはいけないもの」はあるのですか?
A. 腎臓病では一律に「絶対に食べてはいけないもの」があるわけではありません。
ただし、塩分・カリウム・たんぱく質を多く含む食品は、病状や体調、年齢に応じて制限が必要になる場合があります。
必ず主治医や管理栄養士と相談しながら、量や食べ方を調整することが大切です。
Q2. カリウムが多い野菜や果物は、完全に避ける必要がありますか?
A. 必ずしも完全に避ける必要はありません。
野菜を細かく切って水にさらしたり、ゆでこぼしたりすることで、カリウムを20〜50%減らすことができます。
調理方法を工夫することで、取り入れられる場合もあります。
Q3. 高齢者や在宅介護の場合も、厳しい食事制限が必要ですか?
A. 年齢や体力、生活状況によって考え方は異なります。
高齢期や在宅介護では、「制限を守ること」と「その人らしく過ごすこと」のバランスを考慮することが重要です。
医師と相談しながら、その人に合った判断を行うことが大切です。
Q4. 透析をしない選択をした場合、食事はどう考えればいいですか?
A. 透析を行わない場合でも、塩分やカリウムなどへの配慮は基本になります。
一方で、終末期や高齢期では、食事が生活の楽しみとなることも多く、医師と相談のうえで、無理のない範囲で好きなものを取り入れる判断がされることもあります。
Q5. 腎臓病の食事療法で、一番大切なことは何ですか?
A. 一番大切なのは、完璧を目指しすぎないことです。
体調や生活に合わせて調整しながら、無理なく続けられる形を見つけることが重要です。

