在宅介護の台所から|母の「これこれ」が聞きたくて
在宅介護をしていると、今日は何を食べようか」という問いが、ただの献立決めではなくなっていきます。
噛めるかな。
飲み込みは大丈夫かな。
それでも、できればおいしいと感じてほしい。
そんな気持ちで、今日も台所に立っています。
母が好きなもののひとつが、蒸しパンです。
ふんわりしていて、口当たりがやさしく、何より「昔から知っている味」。
蒸し器のふたを開けたときの湯気を見ると、それだけで少し気持ちが和らぎます。
「これこれ、この味」その一言がうれしくて
蒸しパンを作ると、母は必ず言います。
「これこれ。この味なのよ」
その一言を聞くたびに、ああ、今日も作ってよかったなと思います。
特別な材料は使いません。
小麦粉、卵、牛乳、砂糖。
どこの家にもあるようなものばかりです。
でも、その“普通さ”が、高齢になった母にはちょうどいいようです。
新しい味より、「知っている味」「安心できる味」。
在宅介護では、変わらないものを守ることも、大切なケアのひとつなのかもしれません。
母の好きな蒸しパン|基本の作り方
我が家で作っている蒸しパンは、とてもシンプルです。
・小麦粉
・卵
・牛乳
・砂糖(控えめ)
※その時あるもので、分量は目分量です
特別なことはしていません。
材料を混ぜて、蒸し器で蒸すだけ。
その日の体調を見ながら、甘さを控えめにしたり、少し水分を多めにしたりしています。
オーブンも不要で、失敗も少ない。
やわらかさを重視しているので、
粉はふるい、混ぜすぎないのがポイントです。
蒸し上がりは、指で押すとふわっと戻るくらい。
この食感が、母には食べやすいようです。
蒸しパンは「食べるリハビリ」でもある
高齢になると、食事そのものが負担になることもあります。
でも、蒸しパンのように
・やわらかい
・口当たりがよい
・甘さがやさしい
そんな食べ物は、食べる意欲を引き出してくれる存在になります。
「おいしいね」と言いながら食べる時間は、母にとっても、私にとっても、少しだけ気持ちが軽くなるひとときです。
介護の中でも、台所は希望の場所
介護の毎日は、できないことが増えていく現実と向き合う日々です。
でも、台所に立つ時間だけは、「できること」に目を向けられます。
食べられた。
笑顔が見られた。
「おかわり」と言ってくれた。
そんな小さな出来事が、明日への力になります。
おわりに|変わらない味が、心を支えてくれる
在宅介護では、特別なことをしなくてもいいのかもしれません。
いつもの味。
いつもの蒸し器。
いつもの「これこれ」。
それだけで、今日も一日、ちゃんと暮らせたと思えるのです。
黒糖蒸しパンにしたい時はグラニュー糖を黒糖に変えるだけ
上に甘納豆をのせても美味しいです。

