在宅介護の朝は、母の寝癖から始まる
母の寝癖が、なかなかすごい(笑)。
朝起きて、ホットタオルで顔を拭き、化粧水をパタパタ、乳液をなじませて、鏡を差し出すと母は決まってこう言います。
「まぁ……すごいわね、髪の毛」
後ろはぺったんこ、横は立ち上がり、手でなでたくらいでは、どうにもなりません。
高齢になると、髪にハリやコシがなくなり、横になっている時間も長くなるため、どうしても寝癖がつきやすくなります。それでも母は、「このままでいい」とは言いません。
蒸しタオルは、いちばん頼れる寝癖直し
いろいろ試してきましたが、やはり一番効果があるのは 蒸しタオル です。
電子レンジで温めたタオルを、寝癖がついた部分にそっと置き、頭全体を包むようにして、しばらく待ちます。
髪の根元がしっとりしてくると、あの凹みや総立ちが、嘘のように落ち着いてきます。
母はパーマをかけているので、ドライヤーで整えると、ふんわりとした仕上がりになります。
朝いちばんに整えておくと、一日に何度か横になっても、思ったより乱れません。
鏡を見ながら「今日はいい感じね」と言う母の顔を見ると、私の気持ちも少し和らぎます。
母が教えてくれた「髪を整える意味」
母は、私が小さい頃からよく言っていました。
「女の子はね、お化粧なんかしなくてもいいけど、髪だけは乱しちゃダメよ」
理由を聞くと、「生活が荒んで見えるから」だそうです。
当時はよく分かりませんでしたが、今になって、その言葉の意味が少し分かる気がします。
母は、二ヶ月に一度は必ず美容院へ行く人でした。
美容院帰りの、きれいに整えられた母を見るのが、私は昔から好きでした。
グレーヘアをめぐる、母と私の攻防(笑)
そんな母ですから、私のグレーヘアは、どうにも気に入らないようです。
「老けて見えるから染めなさい」毎日のように言われます(笑)。
私はコロナ禍をきっかけに、二年かけて、ようやくグレーヘアにしました。
今さら染め直す気にはなれません。
十五年ほど前、母が乳がんで入院したときのことを思い出します。
染めていた髪が伸び、染めた部分と地毛がはっきり分かれてしまった女性を、病院で何人も見かけました。
病気やケガは予測できません。入院すれば、自由に美容院へ行くこともできません。
最近は、グレーヘア用のケア製品も増え、白髪を活かす選択肢も広がっています。
だから私は、今のところグレーヘア続行です。
……ごめんね、お母さん。
小さな楽しみが、日常を明るくする
今日は雪のち快晴。庭の物干し竿には洗濯物がいっぱいで、とても気持ちのいい日です。
先日、豆苗を買いました。
友人から「水につけて日向に置くと、また伸びるよ」と聞き、母と一緒にやってみました。
まだ一週間ほどですが、驚くほどの勢いで伸びています。

母も感心して、最近は毎日それを見るのを楽しみにしています。
「もう少し伸びたら、何作ろうか?」そんな会話をしながら過ごす時間は、とても穏やかで、ありがたいものです。
在宅介護を始めた頃は、毎日のことに必死で、こうした小さな時間の大切さにも気づけずにいました。
在宅介護を始めた最初の一年に、私自身が感じたこと・戸惑ったこと・気づいたことをまとめて書いた記事があります。
まとめ|身だしなみは、心を整えること
寝癖を整えることは、ただ身支度をするだけではなく、「今日を気持ちよく始めるための準備」なのだと感じます。
在宅介護の毎日は、大きな出来事より、小さな積み重ねの連続です。
髪を整える。
鏡を見る。「今日はいい感じ」と笑う。
そんな一つひとつが、
母の心を、そして私自身の心も、
静かに整えてくれている気がしています。

