「何が食べたい?」と聞いても、答えが返ってこなくなった理由
毎日、「何が食べたい?」と聞くと、母から返ってくる答えは、決まって
「そうね〜、なんでもいいわよ〜」。
娘としては、
「今日は〇〇がいい」
「〇〇が食べたい」
そう言ってもらえたら、作りがいもあるのにな…
そんなふうに思っていました。
でも、ある時ふと気づいたのです。
聞かれても、おかずの名前が思い浮かばないのだと。
母は、料理が趣味と言えるほど、作ることも食べることも大好きでした。
家族の好みに合わせて、毎日いろいろな料理やおやつを作り、
「これ、美味しいわよ。食べてみて」と声をかけてくれた人です。
だからこそ、「何でもいい」という返事に、最初は少し寂しさを感じていました。
けれど今は、それが“気持ちがない”のではなく、
言葉を選ぶ力が、少しずつ難しくなってきているサインなのだと感じています。
動作や体力の変化に戸惑った時期のことは、
👉 在宅介護で実感した母の筋力低下
でも書いています。
自分の好きなものを、好きだと感じながら、安心して食べること
高齢になってからの食事で、いちばん大切なのは何だろう。
栄養バランス、カロリー、塩分――もちろん大事です。
でも、九十代になり、「あと何回、自分でお茶碗を持って食べられるかわからない」年齢になった今、私がいちばん大切にしたいと思うのは、
自分の好きなものを、好きだと感じながら食べること
食べたくないものを無理に勧めても、箸は進みません。
それなら、量が少なくても、偏っていても、「美味しいね」と笑いながら食べられる時間のほうが、ずっと意味がある気がします。
もちろん、完全に好きなものだけでは偏ってしまうので、繊維質の多い食材を添えたり、良質な油を使ったり、できる範囲で、私なりの工夫も続けています。
でも基本は、「食べたい」という気持ちを、いちばんに尊重すること。
最近は、ご飯ができたよ、と声をかけると、「今日はなあに?」と、にっこり聞いてくれる母の表情を見るたび、この選択は間違っていなかったのだと感じています。
料理が大好きだった母の記憶
母は、料理が趣味と言っていいほど、作ることも、食べることも大好きな人でした。
毎日のように「これ美味しいわよ、食べてみて」
そう言って、家族にいろいろな料理やおやつを作ってくれました。
今思うと、母がよく作ってくれたものは、自分が食べたいものというより、家族が喜びそうなものだったのだと思います。
最近は、そんな母の料理を思い出しながら、
「あ、これよく作ってくれたな」
そう思って、同じものを作ることが増えました。
高齢期の食事に、正解は一つじゃない
食事は大切。
母にとっても、大きな楽しみの一つです。
もちろん、バランスの取れた食事が大事なのは分かっています。
でも、いくら体に良くても、食べたくないものは、食べたくない。
それは、とても自然なこと。
成長期の子どもや、健康管理が必要な年代なら別ですが、
「あと何回、自分でお茶碗を持って食べられるか分からない」そんな九十代にとっては、
「何をどれだけ食べるか」よりも、「どう感じながら食べるか」のほうが、大切になってくるのではないかと、私は感じています。
とはいえ、偏りすぎないように、繊維質を意識したり、良質な油を使ったり、できる範囲で工夫は続けています。
「できる」と「安全」の間で迷った経験は、
👉 在宅介護で家の湯船に挑戦した結果
にも残しています。
「美味しかったね」の笑顔を守りたい
先日、お寿司屋さんに行ったときのこと。
ご飯を小さめにしてもらい、中トロを三回おかわり。
最後は、うに(笑)。
お店を出るとき、「美味しかったね〜」と、母は満面の笑顔。
最近、好きなものしか食べなくなった母を見て、
「きっと私も、将来こうなるな」と、思わず苦笑してしまいました。
「今日はなあに?」そう聞いてくれる母の顔を見ると、料理が好きな私としては、やりがい100%。
子育てしていた頃に戻ったような気持ちで、おやつやおかずを作っています。
失敗も、笑える思い出に
お正月番組を見ていたとき、テレビに映ったケーキを見て
「美味しいケーキ食べたいね」という話になりました。
近所のケーキ屋さんはお正月休み。
でも、冷蔵庫に生クリームがある。「よし、バナナクレープを作ろう!」
……結果、大失敗(笑)。
皮が厚すぎて、もちもち。ホットケーキのようで、クレープじゃない。
母は、「クリームとバナナは美味しいけど、この皮は美味しくないわね」と、正直な感想。
二人で大笑いしました。
こういう失敗も、今では大切な思い出です。
出かけるかどうかも、二人で相談
今朝は、「もうお餅は食べたくない」
ということで、ご飯を炊き、母の好きな、かぶと油揚げを炊きました。
食事をしながら、「今日はお出かけする?」と聞くと、
「長く座っていると疲れるし、腰も痛くなるし、車椅子押すの、あなた疲れるでしょ」
……完全に、私の心配(笑)。
「今日はいい天気だし、2〜3時間で帰れば大丈夫だよ」
と言うと、にっこり笑って
「じゃあ、行こうか」と。
母は、いつも私のことを気遣ってくれます。
老老介護だからこそ、今を楽しむ
無理をしないために、今の生活に合う支援を知っておくことも、
介護を続ける上では大切だと感じています。
👉 通院や買い物の負担を減らす!高齢者のための代行サービス活用法
私も、外出すればそれなりに疲れます。
でも、母と出かけると、毎回いろいろな発見があって、案外楽しい。
外食も、買い物も、二人でああだこうだ言いながら選ぶ時間が、今では大切な時間です。
老老介護の二人だから、出かけられる日にも限りがあります。
だからこそ、今できることを、今楽しむ。
「今日は何しようか?」
この問いかけが、私にとっても、かけがえのない充実した時間になっています。

